介護は愛情だけでは続けられない。 わかっていても、実際に目の前の親に怒りが湧いてしまったとき、あなたはどう向き合っていますか?
この文章では、80代の母親を介護する40代女性の事例を通して、HSPのように繊細で共感力の高い人が、介護の中で感じやすい「怒り」と「罪悪感」の扱い方に焦点をあてています。
「いい人でいなきゃ」と頑張ってきた人ほど、自分を責めやすい。 でも、その感情はあなたが壊れるほど抑え込むものではありません。
怒りが湧くことも、責められて悲しくなることも、自然な反応です。
この記事では、Embraceのセッションにも寄せられるリアルな声をもとに、「どう向き合えばいいのか?」「どうしたら少しでも楽になれるのか?」を言葉にしました。
HSPだからこそ感じすぎてしまう毎日に、少しでも心の余白をつくるヒントになりますように。
■ 自分の母に怒りを感じた——その瞬間、私は自分が壊れる気がした
Aさんのお母さまは、かつて総合病院で看護師として働いていた人。どこか気丈で、テキパキと何でも自分でこなす「しっかり者」でした。
ところが、あるときを境に足が弱り始め、歩けなくなり、ついにはオムツが必要になりました。
気丈だった母の変化は、Aさんにとって想像以上の衝撃でした。
「母は“できない自分”を認められず、どんどん攻撃的になっていきました。言葉もきつくなり、私を責めるような口ぶりが増えて……。それがつらくて、私は……怒りが湧いてしまったんです」
Aさんは、自分が怒っていることに驚きました。
「なんで私が、ここまでしてるのに…」と、心の奥で叫んでいる自分。 でも同時に、「そんな風に思ってはいけない」と自分を責め続ける日々。
「仲の良い親子ではなかったけど、だからこそ、私は“いい娘でいたい”と思ってたのかもしれません。でも、もう限界でした」
■ HSPだからこそ、すべてを感じすぎてしまった
Aさんは、自分がHSP(Highly Sensitive Person)であると知ったのは、介護が始まってからでした。
母のため息、介護ベッドのきしみ、昼夜問わず鳴る呼び出し。 そうした一つひとつの刺激に、彼女の心はすり減っていきました。
それでも、「母の役に立たなければ」「私が崩れたら終わってしまう」と、気丈にふるまい続けたのです。
■ 小さな“気づき”が、私を救ってくれた
ある日、EmbraceのセッションでAさんは、大きな気づきを得ました。
それは「母には母なりのプライドがある」ということでした。
長年、総合病院で看護師として働いてきたお母様。
そんな母にとって、「歩けない」「トイレに行けない」「人に頼る」ことは、屈辱に近いほどの情けなさだったのです。
Aさんはそのことに気づいた瞬間、こらえていた涙が溢れたと言います。
「私ばかりが苦しいと思っていたけれど、母が一番つらかったのかもしれない……」
その気づきのあと、不思議な変化が起きました。
今まで何をしても感謝の言葉ひとつなかった母が、ふとした瞬間に
「ありがとう」
と、ぽつりと言ったのです。
「“ありがとう”って、言ったんです。あの人が、あんな言葉を……。
それがすべてじゃないって思えたら、少し、許せたんです。母も、そして私自身も」
介護は確かに過酷です。
けれど、ふとした瞬間にこぼれる母の笑顔、短くても交わせた「ありがとう」の一言。
それがあるだけで、明日もまた向き合っていこうと思えるのです。
■ 「全部自分で抱える」ことをやめたとき、見えてきたもの
Aさんはある日、思い切ってデイサービスを利用してみました。
「母を他人に預けることに、最初は強い罪悪感がありました。でも、ひとりで静かな昼間を過ごしてみて、“こんなにも私は消耗していたんだ”と気づいたんです」
その後、月に数回、ショートステイを利用するようになり、週末に自分のケアの時間を持てるようになりました。 すると、心に余白が生まれ、母との関係にも変化が訪れました。
「少し距離を取るだけで、母に対して“優しくなれる時間”が増えたんです。皮肉だけど、近すぎたからこそ衝突していたのかもしれません」
そしてある日、ショートステイを使い施設で過ごす母に面会に行ったとき——
「◯◯ちゃんも“身体気をつけてね”って言ってくれたんです。あの母が、そんな優しい言葉を……。びっくりしたし、なんだか涙が出ました」
その瞬間、長年の確執や重たさから、少しだけ自分が自由になれた気がしたとAさんは言います。
■ 怒りと罪悪感は、あなたが悪いからではない
Aさんは今、母のケアを続けながら、自分の人生にも目を向け始めています。
「この時間は、ただの消耗じゃない」 「この役割には、何かの意味がある」
そう思えるようになってから、自分に対しても、母に対しても優しくなれたと言います。
「“怒らないこと”が大切なんじゃなくて、“怒った自分”を責めすぎないことが大切なんだと気づいたんです」
■ Embraceが目指すのは、ケアする人が“人生を取り戻す”サポート
介護という役割は、逃げ場がなく、感情の行き場がない場面も多々あります。 でも、その中にこそ、HSPの感性は光を見つける力を持っています。
Embraceでは、
- 「怒ってもいい」
- 「苦しいって言ってもいい」
- 「ケアする人も、ケアされていい」
そんな視点から、セッションを通じてエネルギーの再生と意味づけをサポートしています。
Aさんのように、静かに壊れそうになっている人が、もう一度自分らしさを取り戻せるように。
🌱その時間は、“ただの苦しみ”ではなかった
出口の見えない介護。 誰にも分かってもらえない孤独。
でもその中に、小さな「気づき」が芽吹く瞬間があります。
それに気づけたとき、介護は“苦しみ”から“意味のある時間”へと変わっていきます。
HSPだからこそ見つけられる心のサインがあります。あなた自身の感性で、そのサインを見つけてみませんか?
🔗 詳しくはこちら: Embrace公式サイト
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「怒りや罪悪感とどう向き合うか」を深めていくと、
そもそも“繊細な自分”が介護という役割をどう引き受けていくか、というテーマにもつながっていきます。
HSP気質の人は、相手の痛みや感情を自分のことのように受けとめるため、
日々の介護でエネルギーを消耗しやすく、つい「私さえ我慢すれば」と抱え込んでしまいがちです。
そんなあなたに、HSP特有の感じ方を整理しながら、
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