HSPの介護職が疲れやすい理由|共感疲労と自責への7つの対処法

Insight Column

HSPの介護職が疲れやすい理由
とは?
共感疲労と自責への
7つの対処法

利用者の表情がふと曇った瞬間が、気になって離れない。強い口調で言われた一言を、家に帰ってからも思い出してしまう。忙しそうな同僚に、聞きたいことがあっても声をかけられない。小さなミスをしただけなのに、自分は介護職に向いていないのではと思う。休みの日にも、ふとした瞬間に仕事の場面がよみがえる。

そんな感覚に、心当たりはないでしょうか。

この疲れやすさは、あなたの繊細さだけが原因ではありません。介護という仕事が本来もっている、次のような要素が重なって起こっています。

  • 利用者の状態を観察し続ける負荷
  • 安全を守るという責任
  • 感情を調整しながら対応し続ける負担
  • 人手不足や職場の人間関係

この記事では、心理学研究や公的資料をふまえながら、HSPや繊細な気質を持つ介護職がなぜ疲れを感じやすいのかを整理し、自分を守りながら働き続けるための考え方をお伝えします。

HSPや繊細な気質を持つ介護職が疲れを感じやすいのは、共感性が高いからというだけではありません。利用者の小さな変化を捉える観察、安全を守る責任、感情を調整しながら対応する負担、そして職場の人員配置や人間関係が重なって、消耗が積み重なっていきます。必要なのは感じない人になることではなく、感情・事実・責任の範囲を分けて整理し、必要な場面で相談できる状態をつくることです。共感疲労やバーンアウトには、個人の気質だけでなく、業務負担や組織的な支援体制も関係することが研究で指摘されています。

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柴田恵美(Embrace主宰) 看護師13年・看護教員17年。現在は介護福祉士実務者研修の医療的ケア講師として、介護職の学びを支援しています。人材育成900名以上、対話経験4,000件以上。看護・介護・教育の現場経験をもとに、ケアする人が抱える違和感、感情の消耗、自責を自己理解につなげる方法を発信しています。

目次

HSPとは?介護職が知っておきたい基本

HSPは一般に「人一倍敏感な人」と訳されますが、心理学研究では、感覚処理感受性(Sensory Processing Sensitivity:SPS)という個人差のある特性として研究されています。[1] 「HSP」は、この特性が比較的高い人を表す際に広く使われている呼称であり、医療機関で診断される病名ではありません。

SPSは、内向性や情動性と関連はあるものの、これらと完全に同じ概念ではないことが研究で示されています。[1] その後の研究レビューでも、刺激や情報への反応の仕方には個人差があることが指摘されています。[2]

大切なのは、HSPというラベル一つで、ある人の観察力、共感力、職業適性のすべてを説明できるわけではないという点です。表れ方には個人差があり、つらさのすべてをHSPだけで説明する必要もありません。

実際には、業務量、人員配置、夜勤、身体的な負担、職場の人間関係、ハラスメント、役割の曖昧さ、相談しにくい職場の風土なども、疲れやすさに関わっています。

HSPや繊細な介護職が疲れを感じやすい7つの背景

介護の現場で疲れが積み重なる背景には、次の7つの要素が関係しやすいと考えられます。いずれも「HSPだから必ず起こる」というものではなく、気質、仕事の構造、職場環境、本人の体調や経験が組み合わさって表れるものです。

1 利用者の表情や小さな変化へ注意が向きやすい

表情がいつもより硬い、声のトーンが違う、目線を合わせなくなった——こうした小さな変化に、人より早く気づきやすい人がいます。これは観察力の高さであり、ケアの質を支える力にもなり得ます。同時に、細部へ注意を向け続けることは、注意を使い続ける作業でもあり、蓄積すると疲労につながる場合があります。

2 利用者や家族との関わりを勤務後も振り返りやすい

不安そうな表情、家族の苛立ち、寂しさを訴える言葉。こうした関わりのあと、その場面を勤務後も思い返す人がいます。これは冷淡さの反対であり、相手を大切に思う気持ちの表れでもあります。ただし、振り返りを整理する機会がないまま次の業務に移ることが続くと、疲労として積み重なっていく可能性があります。

3 音、におい、照明、慌ただしさなどの刺激が重なる

ナースコールの音、複数の会話が重なる声、消毒液のにおい、慌ただしい足音。介護の現場は、感覚への刺激が絶えず存在する環境です。刺激への反応には個人差があり、SPSの傾向だけでなく、疲労、睡眠、業務量、健康状態、環境条件なども影響すると考えられます。

4 責任を重く受け止め、小さな失敗を何度も思い返す

記録の書き漏れ、報告のタイミングのずれ。周囲から見れば些細なことでも、「自分のせいで何かあったらどうしよう」という思いが、勤務後も頭から離れないことがあります。

同じ場面や言葉を何度も思い返すことがありますが、責任感の強さは介護の仕事にとって大切な資質でもあります。それが自分を責める方向にだけ働くと、消耗が続いてしまいます。

5 人員不足や職場風土のなかで断りにくい

「誰かがやらなければ」という状況で、自分が引き受けることを繰り返していないでしょうか。人員が足りない現場ほど、頼まれごとを断りにくい空気が生まれます。断れないこと自体は、あなたの弱さではなく、職場の体制や風土に関わる問題でもあります。

6 感情を調整しながら対応する負担が続く

強い口調で言われたり、不機嫌な態度を向けられたりしても、介護職には落ち着いて対応することが求められる場面があります。

内心では動揺していても、それとは異なる表情や態度を保ちながら対応することは、気力を使う作業です。こうした感情の調整が繰り返されることで、疲れが積み重なる場合があります。

7 自分の疲れや違和感を後回しにする

利用者のケアを優先するあまり、自分の中の小さな違和感や疲れのサインに気づいていても、後回しにしてしまうことがあります。

違和感は本来、間違いのサインではなく、自分を理解するためのサインです。後回しにし続けると、そのサインに気づきにくくなることがあります。

HSPだから介護職に向いていないとは限らない

結論から言うと、向き不向きは気質だけで決まるものではありません。本人の経験、技能、職場での役割、環境、支援体制との組み合わせが重要です。

繊細な傾向が、介護の仕事に活きる人もいます。

  • 利用者の状態変化に気づきやすい
  • 言葉にならない不安を察知しやすい
  • 丁寧に確認する
  • リスクを予測する
  • 相手の尊厳を大切にする
  • ケアへの違和感に気づく

一方で、同じ傾向が負担として表れやすい場合もあります。

  • 気づきすぎて休めない
  • 責任を一人で背負ってしまう
  • 相手の不機嫌まで自分の責任だと感じる
  • 曖昧な指示に消耗する
  • 職場の緊張を必要以上に受け取ってしまう

「HSPだから向いている・向いていない」と単純に決めつけず、今の仕事内容、役割、職場環境との相性として考えることが大切です。

共感することと、相手の感情を抱え込みすぎることは違う

相手の気持ちを理解しようとすることと、相手の感情をそのまま自分の中に抱え続けることは、同じではありません。

介護の仕事には、利用者や家族の気持ちに寄り添うという職務上の役割があります。これは大切な専門性です。しかし、相手の不安や苛立ちのすべてを自分の内側に取り込み、抱え続ける必要はありません。

整理の視点
・相手の気持ちを理解しようとすること=共感
・相手の感情を自分の中に抱え続けること=感情の抱え込み
・自分の役割として対応すること=自分が担う責任
・人員配置、安全管理、対応方針=組織や管理者が担う責任
・相手が何を感じ、どのように行動するか=相手自身の領域

共感疲労は、苦痛や困難を抱える人への支援を続けるなかで生じる心身の消耗を表すために使われる概念です。ただし、その定義や測定方法には研究上いくつかの立場があり、二次的外傷性ストレスやバーンアウトと重なる部分があることも指摘されています。[3][4]

共感性の高さだけでなく、業務負担、人員配置、組織的な支援体制なども関係しうるとされており、介護職やHSPの全員に必ず起こるものではありません。[3][4]

看護職を対象としたメタ分析では、共感疲労とバーンアウトの間に関連がみられ、仕事上のストレスやネガティブな感情との関連も報告されています。ただし、こうした相関関係は、直接的な因果関係を示すものではありません。[5]

「相手を大切に扱うこと」と「相手の感情をすべて引き受けること」は、似ているようで別のことです。この違いを意識することは、相手を大切にする姿勢を保ちながら、自分の消耗を減らすための一つの手がかりになります。

医療的ケアのような責任の大きい場面で緊張する人へ

喀痰吸引や経管栄養など、安全に直結する医療的ケアの場面で緊張することは、HSPに限らず起こり得ます。責任感の強さや過去の経験、研修環境、習熟度なども影響すると考えられます。

安全は、一人が完璧であることによって守られるものではありません。手順、観察、確認、報告、連携という積み重ねによって支えられています。

医療的ケアの制度や実施要件については、別記事で詳しく解説しています。

関連記事 医療的ケア研修で緊張する介護職へ|講師が伝えたい観察・報告・連携の基本

HSPの介護職が自分を守りながら働く7つの対処法

ここからは、疲れを溜め込みすぎないために役立つ可能性のある方法を7つ紹介します。

いずれも「これを行えば必ず改善する」というものではなく、状況を整理するための一例や、気持ちを切り替えるきっかけとして役立つ場合がある工夫です。すべてを一度に取り入れる必要はありません。

1 感情と事実を分けて書く

起きたことと、そのときに感じたことを分けて書き出すと、頭の中の状況を整理しやすくなる場合があります。


事実:利用者から強い口調で言われた
感情:怖かった、否定されたように感じた
推測:自分が嫌われているのかもしれない
必要な行動:申し送り、対応方法の確認
2 自分が引き受ける責任の範囲を分ける

すべてを一人で背負おうとせず、次の3つに分けて考えてみましょう。

  • 自分ができること
  • チームへ共有すること
  • 看護師や管理者へ判断を委ねること
3 違和感を具体的な観察に変える

「何となく変」という感覚のままにせず、観察した事実として言葉にすると、周囲に伝わりやすくなります。

・いつもより返事が少ない
・表情が硬い
・呼吸が速く感じる
・食事量が少ない
・普段と違う言動がある

ここでの目的は、医学的な診断を介護職一人に求めることではなく、気づいた事実を次に判断する人へ正確に伝えることです。

4 相談するときの短い型を持つ

相談の言葉に迷うときは、短い型を用意しておくと伝えやすくなります。

「いつもと比べて〇〇が違います」
「私は〇〇が気になっています」
「どのように対応すればよいでしょうか」
5 勤務中に短く休息を取る

まとまった休憩が難しくても、短い時間でできる区切りの習慣を持っておくことが、気持ちを切り替えるきっかけとして役立つ場合があります。

  • 呼吸を整える
  • 水分をとる
  • 肩や手の力を抜く
  • 数十秒だけ視線を遠くへ向ける
  • 記録前に頭の中を整理する
  • 休憩中は仕事の話から少し離れる
6 帰宅後に仕事を終える区切りをつくる

勤務中の場面を何度も思い返すことを完全になくすのは難しくても、仕事の終了を意識できる行動を持つことが、切り替えの助けになる場合があります。

  • 着替える
  • 手を洗う
  • 温かい飲み物を飲む
  • 勤務中の出来事を一行だけ書く
  • 明日考えることをメモして閉じる
7 職場環境を変える選択肢も自己否定にしない

次のような状況が続く場合、それはセルフケアだけで解決できることではありません。

  • 慢性的な人員不足
  • 相談できる相手がいない
  • ハラスメント
  • 休憩が取れない
  • 安全上の不安を伝えても改善されない
  • 体調を崩している

共感疲労やバーンアウトには、個人の気質だけでなく、業務上のストレス、人員配置、勤務負担、組織的な支援体制なども関係しうるとされています。[3][4]

環境を変えるという選択は、逃げでも弱さでもありません。

「介護職を辞めたい」と思ったときに確認すること

「辞めたい」という気持ちが出てきたときは、次の3つを分けて考えてみると、つらさの輪郭が見えやすくなります。

  1. 介護そのものがつらいのか
  2. 今の職場環境がつらいのか
  3. 今の働き方や役割が自分に合っていないのか

この3つは、それぞれ対処の方向が異なります。どれか一つに当てはめて、急いで結論を出す必要はありません。

バーンアウトについて バーンアウトは、WHOのICD-11では病気ではなく、適切に管理されなかった慢性的な職場ストレスに関連する「職業上の現象」と位置づけられています。疲弊だけでなく、仕事への心理的な距離や否定的な感情、職業上の効力感の低下という側面が示されています。[6]
体調についての留意点 強い不眠、食欲低下、気分の落ち込み、動悸、出勤が難しいほどの体調不良が続く場合は、一人で抱え込まず、医療機関、産業保健スタッフ、職場の相談窓口など、専門的な相談先への相談も検討してください。

まとめ|感じない人になるのではなく、選べる自分を取り戻す

HSPや繊細な気質を持つ介護職の疲れやすさは、共感性の高さだけが理由ではありません。観察、安全への責任、感情の調整、職場環境などが重なって生まれるものであり、個人の気質だけでなく組織的な要因も関わっています。

Embraceでは、プロフェッショナルを次のように定義しています。

「プロフェッショナルとは、感情がない人ではなく、感情があってもなお、自分の行動を選び続ける人」

感じることをやめる必要はありません。感情、事実、責任の範囲を分けて整理し、必要なときに相談できる状態をつくっていくこと。それが、自分を守りながらケアを続けていくための土台になります。

Embrace Personal Session

違和感を、自己理解につなげる時間へ

Embraceの個人セッションは、HSPの相談だけを目的としたものではありません。ご自身の中にある違和感を整理し、これからの働き方を考えるための時間です。

  • 違和感の整理
  • 自責の言語化
  • 感情と事実の切り分け
  • 自分の判断軸を整える
  • 仕事を続けるか、働き方を変えるかを考える
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よくある質問

HSPは介護職に向いていないのでしょうか
一概には言えません。観察力や気づきの細やかさが活きる場面がある一方で、負担として表れやすい面もあります。向き不向きは気質だけでなく、本人の経験、技能、職場環境、役割、支援体制との組み合わせによって変わります。
利用者の感情を引きずらない方法はありますか
完全になくすというよりも、感情と事実を分けて書き出したり、帰宅後に仕事を終える区切りの行動を持ったりすることが、切り替えのきっかけとして役立つ場合があります。
小さなミスを何日も考えてしまいます
責任感の強さが関係している場合があります。自分ができること、チームへ共有すること、管理者へ委ねることを分けて考えると、一人で抱え込む範囲を小さくしていくことができます。
介護職を辞めたいのは甘えでしょうか
甘えかどうかで判断するより、介護そのものがつらいのか、職場環境がつらいのか、働き方や役割が合っていないのかを分けて考えることをおすすめします。体調不良が続く場合は、専門的な相談先への相談も検討してください。
HSPは病院で診断できますか
HSPは医学的な病名や診断名ではありません。心理学研究では、主に感覚処理感受性(SPS)という特性として検討されています。ただし、不眠、気分の落ち込み、強い不安、出勤困難などがある場合は、HSPだけで説明せず、医療機関などへ相談することが大切です。
共感疲労とバーンアウトは同じですか
同じ概念ではありません。ただし、研究上は両者の定義や測定に重なりがみられることがあります。共感疲労は、苦痛や困難を抱える人への支援を続けるなかで生じる心身の消耗を表すために使われる概念です。バーンアウトはWHOにより、適切に管理されなかった慢性的な職場ストレスに関連する職業上の現象として説明されています。自己判断で区別するのではなく、強い不調が続く場合は専門機関への相談を検討してください。
医療的ケアが怖いと感じるのは向いていないからですか
そうとは限りません。安全に関わる場面で緊張することはHSPに限らず起こり得ます。責任感の強さや経験、研修環境なども影響します。安全は一人の完璧さではなく、手順・観察・確認・報告・連携によって支えられるものです。

参考文献・公的資料

  1. Aron EN, Aron A. Sensory-processing sensitivity and its relation to introversion and emotionality. Journal of Personality and Social Psychology. 1997;73(2):345-368. DOI:10.1037/0022-3514.73.2.345 最終確認日:2026年8月2日
  2. Aron EN, Aron A, Jagiellowicz J. Sensory processing sensitivity: A review in the light of the evolution of biological responsivity. Personality and Social Psychology Review. 2012;16(3):262-282. DOI:10.1177/1088868311434213 最終確認日:2026年8月2日
  3. Cocker F, Joss N. Compassion Fatigue among Healthcare, Emergency and Community Service Workers: A Systematic Review. International Journal of Environmental Research and Public Health. 2016;13(6):618. DOI:10.3390/ijerph13060618 最終確認日:2026年8月2日
  4. Garnett A, Hui L, Oleynikov C, Boamah S. Compassion fatigue in healthcare providers: a scoping review. BMC Health Services Research. 2023;23:1336. DOI:10.1186/s12913-023-10356-3 最終確認日:2026年8月2日
  5. Zhang YY, Zhang C, Han XR, Li W, Wang YL. Determinants of compassion satisfaction, compassion fatigue and burn out in nursing: A correlative meta-analysis. Medicine (Baltimore). 2018;97(26):e11086. DOI:10.1097/MD.0000000000011086 最終確認日:2026年8月2日
  6. World Health Organization. Burn-out an “occupational phenomenon”: International Classification of Diseases. 28 May 2019. WHO公式ページ 最終確認日:2026年8月2日
この記事について
本記事におけるHSPは、医学的な診断名ではなく、心理学研究における感覚処理感受性(SPS)という特性に関連する呼称として扱っています。共感疲労、バーンアウト、うつ状態などは、それぞれ異なる概念であり、同一のものではありません。バーンアウトはWHOのICD-11において、病名ではなく職業上の現象として位置づけられています。[6] 強い不眠、食欲低下、気分の落ち込み、動悸、出勤が困難なほどの体調不良が続く場合は、医療機関、産業保健、職場の相談窓口などへの相談をご検討ください。本記事は診断や治療を目的としたものではありません。

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