「食事量を見てください」だけでは伝わらない|介護職と看護職で観察の目的を共有するには

介護・看護の現場で、伝え方を考える

「食事量を見ておいてください」
その一言で、同じことを思い浮かべていますか?

介護施設では、看護職から介護職へ、 日々の様子の確認をお願いする場面があります。

食事量、体重、日中の過ごし方。 言葉としては伝わっていても、 「何のために確認するのか」まで 共有できているとは限りません。

見てほしいことだけでなく、 その情報を何に使うのかも伝える。 私は、介護と看護が一緒にケアを考えるうえで、 この一言を大切にしています。

同じ「食事量」でも、知りたいことは違う

「食事量を見てください」と頼まれたとき、 何を確認するでしょうか。

  • 食事全体で、どのくらい食べたか。
  • 主食と副食、それぞれどのくらい食べたか。
  • 普段と比べて、何が違ったか。
  • 食べ始めたものの、途中でやめたのか。
  • 本人が、どのような言葉を話していたか。

どれを必要とするかは、 今、何を確かめようとしているかによって変わります。 毎回すべてを確認してもらえばよい、ということではありません。

たとえば看護職は、 最近の食事量の変化を医師に伝え、 今後の対応を相談するために情報を集めている。 一方、介護職は、 毎食の摂取量を記録すればよいと受け止めている。

そのままでは、 「記録はあるのに、相談に必要な情報が足りない」 という行き違いが起こり得ます。

「伝えたつもり」と「受け取った内容」の間に、 小さな違いがないか。

報告が足りないと感じたときは、 受け手の注意力だけでなく、 依頼の目的や具体性も振り返りたいところです。

目的を伝えると、確認すべきことを話し合える

私は現場で、確認してもらいたいことがあるとき、 できるだけその理由も伝えるようにしています。

たとえば、食事量の変化をもとに、 医師へ今後の栄養面の対応を相談しようとしているなら、 その予定を共有します。

伝え方の例

「最近の食事量の変化を医師に伝えて、 今後の対応を相談したいと思っています。 摂取量の記録に加えて、普段と違った様子や、 本人が話していたことがあれば教えてください」

目的が分かると、 介護職からも「食事中なら、こんな様子が見えています」 「この方法なら確認できます」と、 現場に即した情報や提案が出しやすくなります。

看護職の考えを一方的に説明するのではなく、 介護職が日々見ていることと結びつける。 そのための共有です。

必要な情報が多い場合には、 誰が、どの場面で、どこまで確認できるかも相談します。 理由を伝えれば、仕事を際限なく増やしてよいわけではありません。

この記事の会話例は、職種間の伝え方を考えるための例です。 実際の観察項目や報告方法は、本人の状態、 ケア計画、施設の手順、医療職の指示等に合わせて共有してください。

依頼するときに、そろえたい4つのこと

依頼を長く説明する必要はありません。 短いやり取りでも、 次の4つを意識すると認識の違いを確かめやすくなります。

1.何のために確認するのか

「医師への相談に使う」 「ケアの方法をチームで見直したい」など、 今の目的を伝えます。 まだ分かっていないことは、 分かっていないまま共有してかまいません。

2.何を確認してほしいのか

「いつもと違ったら」だけでは、 人によって思い浮かべる内容が異なります。 今回必要な項目を、具体的に絞って伝えます。

3.いつ、誰に、どう伝えるのか

記録に残すだけでよいのか、 所定のタイミングで口頭でも共有するのか。 報告先と方法を確認します。 急な変化がある場合は、 通常の報告とは分けて施設の緊急時の手順に従います。

4.その方法で確認できるか

「この時間帯に確認できますか」 「記録する場所は、今の様式で足りますか」。 依頼を受ける側が実行できる条件も確かめます。

目的・項目・伝える方法・実行できる条件。

この4つを一緒に確認することで、 「お願いしました」で終わらないやり取りを目指します。

観察した事実と、解釈を分ける

報告を受けるときも、 相手の言葉をすぐに正したり、 「もっと具体的に」と繰り返したりするだけでは、 話しにくくなってしまいます。

「元気がなさそうでした」と聞いたら、 その言葉を手がかりに、 実際の場面を一緒に確かめます。

確認する会話の例

「どの場面で、そう感じましたか?」

「食事中、普段より会話が少なかったです。 『今日はあまり食べたくない』と話していました」

「元気がない」は、観察した人の受け止め方。 「会話が少なかった」「本人がこう話した」は、 その受け止め方につながった情報です。

どちらかを捨てるのではなく、 気づきの背景にある、見たこと・聞いたことを確かめる。 そのうえで、 普段との違いや、次に確認することを考えます。

「いつもの様子」を知っている介護職の気づきは、 職種間で共有したい大切な情報です。 その気づきを、ほかの人にも伝わる言葉にしていきます。

報告を受け取ったあと、その情報がどう役立ったかを返す

情報を集めて終わりにせず、 その後の確認や相談につながったことも、 共有できる範囲で伝えたいと思います。

「教えてもらった食事中の様子も含めて、 医師に相談できました。ありがとうございます」

必要に応じて、 今後チームで確認することや、 変更になった対応も共有します。

これは、報告した人を褒めるためだけではありません。 自分が伝えた情報が何につながったのかを、 チームで確かめるためです。

依頼する、観察する、伝える、 その後の対応を共有する。 その一連のやり取りを、 介護職と看護職の両方から整えていくことが大切だと考えています。

まずは、一つの依頼に「理由」を添える

すべての依頼方法を、一度に変える必要はありません。 次に誰かへ確認をお願いするとき、 この一言を添えてみてください。

「この情報を、何のために確認したいかというと……」

そのうえで、 「今のやり方で確認できそうですか」と聞いてみる。 小さなやり取りから、 互いの見えていることや、 現場で実行できる方法を確かめられます。

介護・看護の連携を考える研修

観察・報告を、職員個人の頑張りだけに任せない

Embraceでは、現場の気づきを言葉にし、 職種間で共有するための研修をご提案しています。

  • 確認してほしいことを、目的と一緒に伝える。
  • 観察した事実と、自分の解釈を分ける。
  • 相手が状況を把握できる報告を練習する。
  • 自施設の報告方法や、役割分担を振り返る。

介護職だけ、看護職だけに改善を求めるのではなく、 依頼する側と受け取る側のやり取りを、 事例を使って一緒に考えます。

対象者や、今の職場で困っていることに合わせて、 研修内容をご相談いただけます。

法人研修・介護研修の内容を見る

執筆:柴田恵美/Embrace主宰・医療的ケア講師・MBA
プロフィールを見る

見てほしいことに、理由を添える。
伝えてもらったことに、その後を返す。

その往復から、
一緒にケアを考える関係をつくっていく。

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