EMBRACE 感性コラム | 支える人の自己理解シリーズ | Vol.04
RESILIENCE
レジリエンスとは?
折れない強さではなく
「揺れても戻れる力」
落ち込まない人になるのではなく、
揺れたあとに、自分なりの場所へ戻るために。
この記事の要点
- レジリエンスは、傷つかないことではありません
- 揺れたあとに戻る力は、経験や習慣を通して育てられます
- 自己理解は、自分が戻るための基準になります
- 休む、相談する、選び直すこともレジリエンスです
Vol.01では感情労働、Vol.02では違和感、Vol.03では自己理解について考えてきました。人を支える仕事を続ける中で生まれた違和感を、自分の言葉へ変えていくと、「自分は何に疲れやすいのか」「何を大切にしているのか」「どのような状態なら戻りやすいのか」が少しずつ見えてきます。
その自己理解を、現実の中で自分を立て直す力へつなげるものが、レジリエンスです。
レジリエンスとは何か
レジリエンスとは、困難、失敗、喪失、変化、ストレスなどによって心が揺れたあとに、回復し、状況へ適応しながら、次の行動を選んでいく力です。
Embraceでは、レジリエンスを、「折れない強さ」ではなく「揺れても戻れる力」と捉えています。
ここでいう「戻る」とは、何も起こらなかった以前の自分へ完全に戻ることではありません。経験したことを抱えたままでも、自分なりの安定を取り戻し、今できる行動を選べる状態へ戻ることです。
一般的な意味とEmbraceの捉え方
一般にレジリエンスは、逆境やストレスから回復し、適応していく力として説明されます。心理学や組織開発の分野では、回復力、適応力、しなやかさなどの言葉で表されることがあります。
Embraceが大切にするのは、その力を「強い人だけが持つ特別な能力」にしないことです。人は揺れます。落ち込むことも、迷うことも、立ち止まることもあります。そのうえで、少しずつ戻り、選び直すことができる。その過程そのものをレジリエンスと考えます。
揺れたあとに、戻る道を知っているから強い。
折れない強さとの違い
「折れない心」を目指しすぎると、落ち込むことや休むことまで、弱さのように感じてしまいます。しかし、レジリエンスは、傷つかないことでも、感情を動かさないことでもありません。
| 比較項目 | 折れない強さ | 揺れても戻れる力 |
|---|---|---|
| 感情への考え方 | 感情を抑え、動じないことを目指す | 感情に気づき、扱い方を選ぶ |
| 失敗したとき | 失敗してはいけないと考える | 失敗から何を持ち帰るかを考える |
| 休むこと | 止まることを弱さと感じる | 回復のための行動として捉える |
| 相談すること | 一人で耐えることを重視する | 必要な支援につながる |
| 回復の捉え方 | 元通りになることを求める | 今の自分に合う状態を取り戻す |
| 行動の選び方 | 我慢し続けるか、すべてをやめるか | 小さな選択肢を増やし、選び直す |
竹は風で揺れる。でも、しなって戻る
竹は風を受けると大きく揺れます。まっすぐ立ったまま、風に逆らい続けるのではありません。しなりながら力を受け流し、風が弱まると、また自分の位置へ戻っていきます。
一方で、硬くて強い木ほど、大きな嵐では折れてしまうことがあります。
でも折れない。
強い木ほど、
嵐では折れることがある。
これは、「何が起きても耐えればよい」という意味ではありません。無理な力を受け続ける前に、休む、距離を取る、誰かに頼る、環境を変えることも、しなやかに戻るための大切な選択です。
なぜ戻れなくなるのか
レジリエンスが働きにくくなる背景には、本人の弱さではなく、疲労の蓄積、自分の感情を確認できない状態、孤立、過度な責任、職場環境などがあります。
感情労働で、自分の回復が後回しになる
人を支える仕事では、相手の不安や怒りに対応しながら、落ち着いた態度を保つことが求められます。目の前の人を優先するほど、自分がどれほど疲れているのかを確認する時間が減っていきます。
感情労働については、「感情労働とは?疲れに気づけない人が、自分を守るために知っておきたいこと」で詳しく解説しています。
違和感を無視し続ける
レジリエンスは、限界まで耐えてから突然働くものではありません。小さな違和感に気づき、早めに休む、相談する、負担を調整することが、戻る力を支えます。
違和感については、「違和感とは?『何かおかしい』と感じる理由と自己理解へのつなげ方」もご覧ください。
「自分が悪い」と考え続ける
責任感が強い人ほど、うまくいかない出来事があると、「自分の努力が足りなかった」と考えます。けれど、業務量、人員配置、組織文化、役割の曖昧さなど、個人だけでは変えられない要因もあります。
レジリエンスを個人の努力だけに求めると、環境や構造の問題が見えにくくなります。戻る力を支えるためには、本人のセルフマネジメントだけでなく、休める仕組み、相談できる関係、適切な業務設計も必要です。
自己理解とレジリエンスの関係
自己理解は、レジリエンスを支える土台です。自分が何に疲れ、どのようなときに傷つき、何を大切にし、どうすれば落ち着きを取り戻しやすいかを知ることで、回復のための行動を選びやすくなります。
自己理解は、「自分が戻る場所」を知ること。
レジリエンスは、その場所へ戻るために行動する力です。
自分が分からないままでは、何を減らせばよいのか、誰に相談すればよいのか、どのような休み方が自分に合うのかを選びにくくなります。
反対に、「私は急な変更が続くと消耗しやすい」「否定的な言葉を受け続けると、考えがまとまらなくなる」「一人で静かに振り返る時間があると戻りやすい」と分かれば、現実的な対策が見えてきます。
自己理解については、「自己理解とは?違和感を、自分の言葉に変えていく方法」で詳しく解説しています。
弱さを探すことではありません。
自分が戻るための道を知ること。
レジリエンスを高める方法
レジリエンスを高めるために必要なのは、無理に前向きになることではありません。自分の状態に早く気づき、回復につながる小さな行動を選べるようにすることです。
1.感情に名前をつける
何をするか:「つらい」で終わらせず、不安、悔しさ、怒り、寂しさ、疲労など、近い言葉を探します。
なぜ役立つか:感情が一つの大きな塊ではなくなり、必要な対応を考えやすくなります。
今日できること:一日の終わりに、「今日、最も強かった感情」を一つだけ書きます。
2.身体の変化に気づく
何をするか:肩、呼吸、胃、頭、眠気など、身体に出ている変化を確認します。
なぜ役立つか:身体の反応は、心が限界へ近づく前のサインになることがあります。
今日できること:仕事の前後で、肩の力と呼吸の深さを比べます。
3.休息を予定に入れる
何をするか:余った時間で休むのではなく、あらかじめ休息の時間を確保します。
なぜ役立つか:責任感が強い人は、予定が空くまで休めないことが多いためです。
今日できること:10分だけでも、誰にも応えない時間を予定に入れます。
4.一人で抱え込まず相談する
何をするか:答えを求める前に、状況を言葉にして誰かへ共有します。
なぜ役立つか:自分の視点だけでは見えない選択肢や、環境要因に気づきやすくなります。
今日できること:信頼できる人に、「解決ではなく、少し聞いてほしい」と伝えます。
5.できなかったことより、回復したことを見る
何をするか:失敗や落ち込みだけでなく、「それでも戻れた部分」を確認します。
なぜ役立つか:自分には回復する力があるという、現実に基づく感覚が育ちます。
今日できること:「今日は何から戻れたか」を一つ書きます。
6.違和感を記録し、選択肢を増やす
何をするか:引っかかった出来事、感情、身体反応、望んでいたことを簡単に記録します。
なぜ役立つか:繰り返し疲れる場面や、自分に合う対処が見えやすくなります。
今日できること:「何が起きた・どう感じた・本当はどうしたかった」の三行を書きます。
Embraceレジリエンスモデル
Embraceでは、レジリエンスを、強さを身につける訓練ではなく、違和感に気づき、自己理解を通して、行動を選び直す循環として捉えています。
自分が戻るための五つの質問
- 今、私は何に揺れているのだろう
- 身体は、どのようなサインを出しているだろう
- 本当は、何を大切にしたかったのだろう
- 今の私に必要なのは、努力・休息・相談のどれだろう
- 今日できる最も小さな選択は何だろう
まとめ
レジリエンスとは、困難やストレスの影響を受けない強さではありません。揺れたあとに自分なりの状態へ戻り、必要に応じて行動を選び直す力です。
落ち込むこと、迷うこと、休むこと、誰かに頼ることは、レジリエンスの欠如ではありません。それらを通して自分の状態を理解し、回復につながる選択をすることも、戻る力の一部です。
自己理解が深まると、自分が何に疲れ、何を大切にし、どのような方法なら戻りやすいかが分かります。その理解が、感情調整、ストレス対処、セルフマネジメント、心理的柔軟性を支える土台になります。
ただし、レジリエンスを個人の努力だけに求めてはいけません。過重な業務、人員不足、ハラスメント、相談できない職場文化など、環境や組織の問題には、環境側の改善が必要です。
感情がないことではありません。
感情があってもなお、
自分で行動を選び続けること。
レジリエンスとは、ストレスや困難で揺れたあとに、自分なりの状態へ戻り、行動を選び直す力です。自己理解によって、自分の疲れ方、大切にしたい価値観、回復しやすい方法が分かると、休む、相談する、負担を調整するなどの選択がしやすくなります。こうした力はバーンアウト予防の一助になりますが、個人の努力だけでなく、職場環境や業務構造の改善も必要です。
よくある質問
レジリエンスとは何ですか?
レジリエンスが高い人とは、どのような人ですか?
レジリエンスは生まれつきですか?
レジリエンスを高めるには、どうすればよいですか?
レジリエンスとメンタルの強さは同じですか?
自己理解とレジリエンスには、どのような関係がありますか?
レジリエンスはバーンアウト予防に役立ちますか?
EMBRACE SERIES
支える人の自己理解シリーズ
感情労働から生まれる疲れや違和感を、自己理解と、自分で行動を選ぶ力につなげていく連載です。

